食べる力が動くとき (2014年9月号)

高齢者の栄養管理で、“ 食べられない ” という課題は尽きません。
味の好みによるものもあれば、噛む力や飲み込む力などの機能が低下し食べられなくなることもあり、理由はさまざまです。さらに、高齢者は味覚をはじめ視覚・嗅覚・触覚・聴覚などの感覚も低下していきますので、健常者に比べて障害なく食べることが必然的に難しくなってきます。

★ 食事がすすむ誕生日食の不思議 ★

私がいる施設では、「 誕生日食 」 を提供しています。
お誕生日を迎える方から食べたいメニューをお聞きし、お祝いとして実際にリクエストメニューをご提供します。これまで聞き取りした中では、お刺身やお寿司、うなぎ、天ぷらなどが大変人気です。

普段は食事時間を要する方が、黙々と手を動かして召し上がったり、少食で普段は食事量が半分ほどの方がパクパクと完食されたり…と誕生日食の日は食べ方が劇的に変わります。また、手や腕がスムーズに動かない方までも、ご自身で頑張って口まで食べ物を運ばれる姿がみられたときは、嬉しいと同時に大変驚きました。

中には、きしめん、青菜のお浸し、卵焼き…なんていうリクエストもありました。
きしめんをリクエストした方から詳しく聞くとこんなエピソードがありました。「やっぱり名古屋人だからねぇ。それにね、昔、家族と外へ出かけに行ったときは、よくきしめんを食べて帰ってきた。私にはきしめんが思い出の食事なんだわ。」
リクエストした方にとっては、その食べ物にまつわる思い出や背景があり、とても感慨深いものです。実際、食べるスピードはいつもよりも速く、きれいに完食されました。

食事がすすむその裏側では、各々がもっている嗜好や昔の思い出、生活歴などがあり、それらが大きく関わっているということです。さらには、
“ 美味しい ”と思う食事は、その方の「食べる力」をも生み出すのだな、と痛感しました。


★ “ 食べる力 ” を引き出すために ★

このように、食べる意欲が高まり、“美味しい“と感じるには、さまざまな要因が重なり合っています。(下の図のように、食べ物だけでなく、食べる人、それを取り巻く環境や背景でさまざまな要因があります。)

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食事がすすまない方に対しては、食べられない理由を探しながら、「 どうしたら食べられるかな?」 と工夫をすることが必要です。

日常の献立を作成する上では、一食が全て同じ味にならないように、味の組み合わせや見た目に変化をつけるように心がけています。例えば、基本味の「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」をはじめ「辛味」「渋味」を使い分けることや、調理方法(煮る、炒める、揚げる、蒸すなど)が重ならないように工夫します。また、食感や食べやすさを配慮することもとても重要です。

毎月提供する特別食では、旬の食材を使い季節感を食事で表現します。旬のものや、行事に関わるものは食欲に影響しやすく、毎回皆さんの反応はとても良いです。また、提供する前よりお知らせ(※1)を施設内に掲示し、食欲がより高まるように働きかけます。

私たちの体調や嗜好は日々変わりますから、食事も変化させてその方に合わせていくことが大切です。もちろん、食事の制限や機能的なレベルも各々によって異なりますので、その中でも美味しく食べられるように気を配ります。

今ある感覚や機能を生かして食べることが大事ですし、食べる力を引き出し、食事が「楽しみ」に繋がれば、栄養士としてとても嬉しいことです。

※1 
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※誕生日食(刺身)

参考資料 : 「 調理と理論 」 同文書院
                                                                        syokuji

                                           管理栄養士/山口 恵里佳 (やまぐち えりか)
                           2014年9月号
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